1週間に4日、温泉とホイリゲの街バーデン(Baden bei Wien)へ通いました。というと、温泉に浸かって、ワインを飲んで飽食したように聞こえるかも知れませんが、インタビューの補充調査だったのです。ちなみに私はノン・アルコール人間です。
バーデンでは、11月24日(日)にグライヴァイト家のホイリゲで簡単な予備調査をし、12月16日(日)に長野大学のO先生と愛媛大学のN先生の3人で直売所を訪問して、ホイリゲ協会会長のマイヤーさんご一家にインタビューさせていただきました。こちらに来て最初に入った調査地でしたが、アパートメント・ホテルから片道2時間弱で行ける街なので後回しにして、遠隔地のビュルゲンランド(1月中旬)とザルツブルグ(1月下旬)とスイス(2月中旬)の調査を先に済ませました。
ビュルゲンランド、ザルツブルグ、スイスでは、それぞれ3家族から5家族にインタビュー出来たのですが、バーデンではまだ2家族。しかもどちらも補充調査が必要な状況なので、この2家族の補充調査と、さらに2家族から3家族の事例を収集する必要があります。
このような家族調査は、誰かに誰かを紹介していただき・・・と、スノーボール方式で対象を開拓するしかありません。頼みの綱はホイリゲ協会会長のマイヤーさん。彼が一押しのサイデル家は、3月8日以降ならウェルカムだけど、その前はワインの仕込みが忙しくてNGとのこと。
仕方ないのでゲリラ作戦です。直売所に通い、当直のホイリゲ農家にご協力いただくしかありません。直売所は、月-土の午前10:00-12:30はパートさんですが、午後15:30-18:30と日曜日の午前・午後は当直のホイリゲ農家が勤務していて、温泉の滞在客が時々立ち寄る程度なので、そこそこ暇な感じなのです。
マイヤーさんからの情報では、2月25日からの週はメルツヴァイラー家が当直とのことだったので、教わったメルアドにインタビュー依頼のメールを入れましたが返事がありません。オーストリアでは、現場に行って直接話すしかないことがままあります。
25日(月)15:30に行ってみたところ、以前、11月24日にも勤務していたパートのおばさんでした。メルツヴァイラーさんは忙しく、午後もパートのおばさんが駆り出されたとのこと。翌日の午後はメルツヴァイラーさんのお姉さんが勤務するので、また来てみてくださいとのこと。
これで「ではまた明日・・・」と帰るようでは、フィールドワーカーは務まりません。事情を説明したところ、バーデンで最も長い歴史を誇るホイリゲ、ランベルガーさんのコートがハンガーに掛かっているので、しばらく待っていればコートに取りに来るはず。そこでインタビューに協力してもらったら、との有難いアドバイス。おばさん、ありがとう!
小一時間ほど張っていたらランベルガーさん登場! 突然のことでしたが快くインタビューにご協力いただけました。それだけでなく、近所に日本女性の華道の先生が住んでいるので彼女にも来てもらいますとのこと。さらに、1989年に家族の500年史を編集したので自宅まで取りに行って来ますとか。そんなこんなで、あっという間に18:30になってしまいました。ランベルガーさんには補充調査が必要かも。
2月26日(火)の午後は、メルツヴァイラーさんのお姉さんが勤務されていて、接客の合間にインタビュー。3時間たっぷりインタビューできました。メルツヴァイラー家はバーデンで最も経営規模が大きいホイリゲで、結婚したお姉さんも勤務しているのです。28日(木)19:00から直売所でワイン講座があり、担当講師はメルツヴァイラーさんとか。この講座に参加すれば、本人と話が出来ますよとのこと。
お姉さんにほとんど教わりましたが、やはり経営主にお目にかからないことには・・・と、28日にも。ワイン講座の受講生は私も含めて5人。2人は温泉の宿泊客で、2人は隣のノイシュタットに住む若いカップル。ワイン講座では、講師によるワイン醸造の解説を聞きながら、10種類くらいのワインをテースティングします。本格ワイン党の受講生から専門的な質問もあり、終わったら21:00。これからインタビューというのはあまりにも下賤。というか、私は眠くなってしまいました。メルツヴァイラーさんが、3月2日(日)だったら自分が直売所の当直だからというので、出直すことにしました。
3月2日(日)。本当は午前中に訪問したかったのですが、2月29日(金)から3月1日(土)にかけて、研究室で夜通し、ゼミ生の卒業論文集の編集作業をしていたため、体力限界。研究よりも体調管理が先決です。午後から出かけました。
ところが日曜午後の直売所はコミコミで、しかもメルツヴァイラーさんは口べたなタイプで多くは語らず。逆に、直売所に来たお客さんが珍しがって私を質問攻め。インタビューの録音2時間のうち、1時間50分は雑踏でした。わずか10分程度のインタビューでしたが、バーデンの土地問題、ホイリゲの後継者問題について、貴重な情報をいただきました。
この日は、ホイリゲ協会会長のマイヤーさんのお宅がホイリゲを営業している日。ホイリゲには、ご自慢の水彩画をたくさん展示してあるとのことなので、一度は行ってみないと。元家庭科教員の奥様のお料理も楽しみ。
ホイリゲでは、飲み物はテーブルで注文しますが、お料理はデパ地下のお惣菜コーナーのように各自がカウンターまで行って注文して、レジで会計してテーブルに持ち運びます。
飲み物の担当は男性。盆栽が趣味という後継者のクレメンス君も手伝っていました。兵役に代わる市民奉仕もあと1か月で終わるそうです。
こちらでは、夜の食事はカルテシュパイゼ(冷たい料理)。私が選んだのは2種類のテリーヌと、パティと、ホワイトヴルツェル(ホワイトアスパラのようなもの)のサラダ。テリーヌは紫玉ねぎのスライスとバルサミコ酢をかけてマリネにしてくれました。パティ用のパンはスライスして。ホイリゲに来ると、オーストリアの郷土料理の食べ方がわかります。ウィーン市内のレストランだと冷凍野菜を使っているところもありますが、ここはすべて手づくり。薄味で美味しくて、しかもとても安い。これすべてで4.6ユーロ(約730円)。
120席ほどあるお店は顧客で一杯。それでも日曜日の夜は少ない方なのだそうです。マイヤーさんはテーブルをまわってコミュニケーション。マイヤーさんのブドウ園のワインは、ほぼ100%、このホイリゲで販売されるそうです。
最後の写真は、2年前に改築したばかりというトイレの洗面台。ゴージャスな生け花は奥様ご自慢のアレンジメント。猫柳は復活祭の植物。鏡に映った水彩画がマイヤーさんの作品。1枚約5万円程度とか。飾るところがあったら購入したいところですが・・・。
マイヤーさんのお宅の営業日は、各月で、2週間連続。日曜日は朝10時から夜12時までなので、仕込みを入れると16時間労働だそうです。
バーデンのホイリゲは、1980年頃は75軒あったのに、2008年は44軒。毎年数軒ずつ廃業しているそうです。家族経営なので、後継者がいないと、高齢の親だけでは長時間労働に堪えられません。この44軒でも、後継者がいるのは25軒とか。
どうやって後継者を確保するかが最大の問題。マイヤーさんは、幼い頃からホイリゲの仕事を手伝わせ、興味を持たせるのが一番だと言います。ワイン祭りなどのイベントを増やしたり、催し物会場でフェアを開いたりして、ワインを味わってもらう機会をつくると、確実に顧客が増えるとのことなので、まだまだ発展の余地はありそう。ワインの味はさまざまなので、インターネットを利用した宅配だけでは、顧客開拓には繋がらないのだそうです。
日本だったなら、付加価値の高い新品種に切り替えるという発想がありますが、20歳のクレメンス君に聞いても、顧客が馴染んだワインの味が出せるのは伝統的なブドウの品種なので、伝統を守るそうです。さすがにオーストリアですね。
気がついたら9時半をまわっていて、時速22キロのローカル鉄道を使って帰宅したのは11時半。ホセ・クーラ登場のオペラ<カヴァレリア・ルスティカーナ>ほかは観られませんでした。
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