1月13日(日)から15日(火)にかけて、オーストリア東部ハンガリー国境に位置するブルゲンランド州にインタビュー調査に行っていました。16日(水)までかかる予定でしたが、早朝から昼食もとらずに奔走したため、早めに切り上げることができました。
調査ノートは、終わってすぐに整理しないと記憶が曖昧になってしまうので、16日はこの作業にあてました。17日(木)は、7月に韓国で開かれる国際学会の発表エントリー締切を18日(金)に控えていたため、その英文アブストラクト執筆にあてました。締切ギリギリでしたが、おかげさまで発表エントリー出来たので、晴れてブログ付けの時間が取れました。
ブルゲンランド州は、ヨーゼフ・ハイドンを宮廷楽隊長として重用したことで有名な、ハンガリー最大の貴族エステルハージ家の領土でした。第一次世界大戦でオーストリア=ハンガリー二重帝国が崩壊した後、オーストリア領になりました。エステルハージ家の統治時代は、現ハンガリー領のショプロンが首都で、現在の州都アイゼンシュタットは第二の都市だったそうです。
国土の4割が山岳地帯のオーストリアにはめずらしく、ブルゲンランド州は平地です。しかし、山がないためにウインタースポーツによる冬季の観光収入が見込めず、条件不利地域が多くなっています。今回の調査は、オーストリア連邦機関中山間条件不利地域問題研究所で女性政策を専門にするテレジアの調査プロジェクトに便乗させてもらうかたちで実施しました。
13日(日)の朝は、テレジアの長男で8歳になるフリードリッヒが教会の儀式に出なければならないとのことで、お昼にウィーン郊外のテレジアの家まで行き、そこで昼食をとってから出かけました。サンデードライバーのテレジアの運転は、助手席で見ていてハラハラしましたが、東京とは勝手が違うので替わるわけにもいかず、私は地図を見ながらナビゲーターに徹しました。
ブルゲンランド州は縦に長く、私の研究テーマに即した調査対象はウィーンに比較的近い北方のアイゼンシュタット市内に固まっているのですが、テレジアの調査対象は最南端のハンガリー国境付近に散在していて、片道150キロの道のりを2往復。ウィーン-アイゼンシュタットも80キロありますから、2泊3日で800キロ近く走りました。
質的調査はスノーボール方式で対象者を開拓するしかありません。事前にアポが取れていることは少なく、その日の対象者の口コミで翌日の対象者を紹介していただくという状況で、ほとんど無計画でしたが、計8事例のインタビューが出来ました。
朝7時過ぎから暗くなるまで調査で走り回ったので、アイゼンシュタット市内のハイドン博物館の向かいにある農家民宿に2泊したものの、ハイドン博物館もエステルハージ宮殿も、まったく見ることが出来ませんでした。1枚目の写真は、ハイドン博物館の庭で撮影した、闇夜に浮かぶハイドンの記念碑です。
夏は、ハンガリーとの国境にあるノイジードラー湖畔のメルビッシュ音楽祭や、<ナブッコ>や<ラ・トラヴィアータ>のオペラ上演で賑わう街なので、いつか夏に観光で来てみたいものです。
アイゼンシュタット市内では、ブドウ園経営の継承事例をインタビュー調査しました。日本の直系家族制と違って女性が継承することも多く、そうすると姓が変わるのに屋号があるわけでもなく、それでいて「わが家は16世紀から続いている」とか。何を拠り所にして家系意識があるのでしょう。
両親がそれぞれの親のブドウ園を継承していると、2人の息子がそれぞれのブドウ園を分担して継承することもあります。父親が年金をもらう年齢に達すると、年下の母親と子どもが一時的に共同経営者になることもあります。さらには親夫婦・子夫婦別居が一般的になっているので、農園=経営体、世帯、家族がイコールではありあません。
年金生活に入ってもブドウ園の仕事は続けるけれど無報酬。後継者や配偶者の給与は特になし。家族・親族がブドウ園を手伝っても無報酬。家族内の労働はアンペイドワークのようなのですが、女性も農園主になれるし、親は50代から年金生活に入るので後継者が農園主になれる日も近い。ということで不平等な感じは全くなさそうです。
2枚目、3枚目、4枚目の写真は、私が泊まった、エヴァさん(35歳)が経営するブドウ園の農家民宿。マーガレット4つの認証は、農家民宿では最高ランク。エヴァさんは、この自宅でワインセミナーも開いています。なんともロマンチックなインテリア。2004年に新築したばかりで、1泊40ユーロ朝食付。自家製のブドウジャムが美味しかった。
5枚目、6枚目の写真は、ツェッヒマイスター家のワイナリー。農園主のヨーゼフさんは市会議員を10年務めていて、友好都市の香川県讃岐市にも行ったことがあるそうです。いきなり日本語の名刺が出てきてびっくり。
テレジアの調査対象者は、こだわりの有機農業者で女性起業家。ブルゲンランド州有機農家連合初代会長のイーダさん、有機ハーブ栽培家で農園療法や啓蒙活動もしているモニカさん(写真7枚目、8枚目)、ボーデンクルトゥア大学で環境マネジメントを学んだ後、エコロジカルな生活を実践しながら生活プランナーとしても活動しているブリギッタさん(写真9枚目、10枚目)、そして、有機栽培農家女性の直売所を経営するテレジアさん(写真11枚目)。
ウィーンでの都会生活をやめて帰農した方が多く、アイゼンシュタット市内の大規模な資本投資事例とは対照的でした。農業生産で生計を立てているというよりも、啓蒙活動やプランナーとしての収入で食べているという感じの方たちでした。

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